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家紋の話あれこれ2009年


16.家紋の中の「鳥たち」 @


先日テレビで、「バードウォチングがブーム」というニュースをやっていました。


ローカルニュースではあったのですが、弊社のすぐ近くがポイントらしく、遠くから大勢の方がスコープやカメラを手に、やってきていました。


ここ富士市は、富士山の頂上から駿河湾にかけて広がっており、富士川をはじめ、水鳥が生息するのに適した河川も、数多く流れています。

また、水田も多いので、春から夏にかけては、カルガモの親子が田んぼの中に留まらず、用水路や道路、はたまた我が家の庭先にまで、のんびりと闊歩していたりします。
左の写真は、いぜれも弊社社屋から撮影した、富士山とオナガです。
オナガの他にも、木々にとまったり、水田で餌を探す、様々な鳥たちを観察することができます。

雀、鳩、カラス、燕、ムクドリ、カルガモ(この辺りは割合どこでも見かける鳥たちだと思います。)
コサギ、ヨシゴイ、アオサギ、セキレイ、ルリビタキ(これらはさすがに、イナカならではではないでしょうか?

庭にキジや猿が来ていたこともありますし、先日は市の防災無線で、「クマが出たので注意するように」!!!。(これはさすがに、富士山の麓のほうでしたが)


話が逸れましたが、これだけ多くの鳥たちが身近にみられるのに、家紋に登場する鳥たちには、だいぶ偏りがあります。


以前より、「家紋の素材には木や花が多く、動物、鳥、虫は少なく、魚は全くと言っていいほどない。」ということは書いてまいりましたが、その少数派の中では頑張っていると言える鳥も、実際,使用されているのは、かなり限られた種類のものに限られている、といえます。


鳥類の家紋で最も多く使われているのは、「鷹」ということになります。
しかし、鷹の場合、「鷹の羽」として羽だけを図案化したものがほとんどと言えます。
勇猛な鷹はもちろん、尚武的な意味合いから使用されたのでしょうが、その発生は、九州の阿蘇神社です。

家紋しては、「蒙古襲来絵巻」で菊地氏が「並び鷹の羽」を使用しているのが見られます。

現在では「鷹の羽」は全国に広まっており、その使用家数は家紋
   丸に違い鷹の羽 の中でも、トップクラスです。

全国に広まった理由は、いろいろあるのですが、勇猛なイメージとバランスのとれた美しい文様は、大きな理由の一つでしょう。


鷹の羽には、バリエーションも数多く存在します。


 並び鷹の羽 三つ並び鷹の羽  抱き鷹の羽  三つ鷹の羽 六つ鷹の羽車
八つ鷹の羽車  井上鷹の羽 並鷹羽に割鷹羽  浮線鷹の羽 鷹の羽組井桁
割折れ鷹の羽菱 三つ違い鷹の羽 割違い鷹の羽 反り違い鷹の羽 細違い鷹の羽
 柳井鷹の羽  芸州鷹の羽  白川鷹の羽  浅野鷹の羽  中村鷹の羽

上記のように、並べたり、重ねたり、割ったり、折ったり・・・。家紋は一つのモチーフを、実に多様に変化させて、多くのバリエーションを生み出します。


鷹の羽の家紋で、一般的な紋帳に記載されているものが、50種類以上あるのに比べ、鷹そのものをモチーフにした家紋は、3〜4種類が記載されているに過ぎません。

左の家紋は、「鷹の丸」という家紋です。

「鶴の丸」や「鳳凰の丸」と比べると、優雅さよりも力強さ、たくましさが感じられ、いかにも「武家の家紋」といった印象を受けます。
     鷹の丸

「丸に違い鷹の羽」は私自身、子供のころ、一番好きな家紋でした。


何しろ、特撮ヒーロー「変身忍者 嵐」の家紋だったのですから。






15.「天地人」石田三成の「大吉大万大一」


NHK大河ドラマ「天地人」。主人公 妻夫木聡さん演じる直江兼続もかっこ良いのが、小栗旬さん演じる石田三成は、屈折しているようで、その実、実直な人物が、見る者を惹きつけます。


若い人たちの武将ブームの中でも、石田三成という武将は、大変人気が高いようです。


石田三成の家紋として有名なのは「大吉大一大万」。

旗印としてはインパクトがありますが、家紋の中でも、もっとも「家紋らしくない家紋」ともいえるかもしれません。

石田家ではこれ以外にも、桔梗紋や九曜紋を使用していたそうですので、状況によって、使い分けていたのかもしれません。

字紋には、名の一文字を使ったものと、字の持つ吉祥的、尚武的意味にちなんだものが多いのですが、この紋は吉祥尚武の大盤振る舞いです。
    大吉大一大万 「大」は盛大、強大、広大などを表し、「吉」は文字通りの吉、「一」
は「かつ」と読んで勝利に通じ、「万」は卍(まんじ)の意味で吉祥の記号です。

もっともこの紋は、石田三成だけが使用しているわけではありません。

同じ構成の字紋には数種類あるようですが、「大一大万大吉」というものも多く見られます。

一説によれば、石田三成は「万民が一人のため、一人が万民のために尽くせば太平の世が訪れる。」との意味で、この紋を使った
   大一大万大吉 とも言われます。

丹羽基二博士は、著書「家紋の由来と美」の中で、「大一」の「一」の字がその下の「大」にくっついて「天」の字になり、「万」を「下」に読み替えることで、「大いに天下をとってよし(吉)」と読み解いています。


正直この説は、豊臣秀吉に忠義を尽くした石田三成に、とてもよく似合い(この場合、天下を取るのは秀吉ということになります。)、ナルホドっと思ってしまいました。


石田三成は幼名「佐吉」といい、寺小姓をしていた寺に、秀吉が喉を潤しに立ち寄った際、お茶を三度、入れ方を変えて出し、秀吉を感心させた、という逸話があり、これを機に召し抱えられたと言われます。


これは「三杯の茶(三献茶)」と言われ、有名な逸話ですが、どうやら江戸時代に創作されたお話のようです。




ところで、石田三成を演じる小栗旬さん。大河ドラマで石田三成役を演じるのは、実は二回目で、1996年の大河ドラマ「秀吉」の中で、幼少時代の三成「佐吉」を演じています。(当時12〜13歳位?)。


また、今回の「天地人」でも、回想として、「秀吉」の際に撮影された「三杯の茶」の場面が使われたとのことで、同一人物(俳優)が子役と成人後の二役を演じるという、大変珍しい作品になっているのです。






14.高山陣屋と兎紋


先日、岐阜県の飛騨高山方面に行く機会がありました。


江戸時代、飛騨は徳川幕府の直轄領で、177年間に25代の代官・郡代が江戸から派遣され、行政・財政・警察などの政務を行いました。御役所・郡代役宅・御蔵を併せて「高山陣屋」と称します。(高山陣屋パンフレットから抜粋)


高山陣屋は全国にただ一つ現存する徳川幕府郡代役所です。
この機会を逃すわけにはいかず、行ってきました。


現在、高山は岐阜県でも大きな都市ですが、当時、山深いこの土地に、徳川幕府の威厳を感じさせる、堂々たる門です。
徳川葵の入ったお大きな提灯が掛けられています。(もちろん当時のものではありません。)
昔もやはり、このような感じで掛けられていたのでしょうね。

江戸幕府が葵紋の使用を厳しく規制したことは以前にも書きましたが、そのような時代、この三つ葵紋の威光は、今の時代には想像もできないほどのものだったでしょう。
陣屋表玄関にも、やはり大きな徳川葵の幕が張られています。(もちろん当時のものではありません!)


ここから、靴を脱いで中に上がるのですが、入ってすぐ、釘隠しに面白い文様を見つけました。
兎の文様です。

ちゃんと目や鼻も描かれています。

よく見てみると、すべての柱の釘隠しに、同じ兎が使われていました。

これは、当時のものかっ!と思ったら、違いました。

しかし、当時、同じデザインの釘隠しが使われていたのは事実のようです。(当時のものがちゃんと展示されていました。)


これは、復元修理の際に、複製したもののようです。


この文様、細部は違いますが、家紋にも使われています。


「真向かい兎」という家紋です。

耳の向きが少し違いますが、背中のラインや顔つき、前足の感じなどそっくりです。

この「真向かい兎」は写実的に描かれているため、新しい紋かと思われがちですが、兎の家紋は「大阪夏の陣」で旗印に使われた記録もある、かなり歴史ある家紋です。

「古事記」では「因幡の白兎」が大国主命に助けられますが、のちに兎神となって因幡国高草郡の白兎神社に祀られます。また、仏教にも「月に兎が住む」という説話があります。


日本で瑞獣、神獣ともされますが、同時に肉は食用に、毛は筆に使われていました。


中国でも、その文様は古い時代のものにも見られます。


東京国立博物館に展示されている「兎蒔絵櫛箱」の兎は「月は海上に浮かび、兎波を走る」の句に意匠した文様で、その事からか、家紋の兎も、波と合わせて描かれたものも多く見られます。


捕らえやすい蛋白源としての実用的な意味以外に、やはり、その美しく、かわいらしい姿は、古来から人々に愛されたのでしょう。




13.松本城に行ってきました。


過日、家族で長野方面に旅行に行ってきました。


今までにも、松本を通過することは何度かあったのですが、どういうわけか、松本城に行ったことはなく、今回初めて、立ち寄ることができました。


松本城の天守閣は、1593年ごろ築造されたと考えられています。

明治時代の旧物破壊思想により、売却、破壊の危機にさらされたこともあったのですが、多くの人々の努力により買い戻され、大規模な修復を施されました。

現在、国宝として、その雄姿を見ることができ、天守閣にも登ることができます。

お城めぐりというと、何だか地味で、年配の方が多いのかと思っていたのですが、意外にも「イマドキノワカモノ」が多く訪れており、驚きました。

今、若い人たちの間でも、「歴史」や「戦国武将」が人気なのは知っていましたが、これほどまでとは・・・!おっと、家紋屋として、このブームに乗らねばっ!・・・・と商魂をひそかにメラメラと燃やしながら、天守閣に登りました。


天守閣の中は、戦国時代を戦うための迫力に満ちており、400年の歴史をひしひしと感じさせるものでした。


また、中に展示されている鉄砲や武具などには、見事な細工で家紋が描かれており、いかにこの時代の人々が、家紋に誇りと敬意を持っていたかを、しみじみ感じました。(ホントは写真も撮影したかったのですが、禁止でした・・・)


天守閣以外にも、様々な場所に、家紋は使われています。

この3枚の写真は、本丸防衛の要である「黒門」に施された家紋です。

左は「丸に立ちおもだか」。左下は「五七桐」。下の瓦には、「丸に立ちおもだか」と「五七桐」が描かれています。

松本藩は六家23代の藩主によって、治められてきました。


     1590〜1613      1613〜1617 1617〜1633  1726〜1869
    石川氏(笹竜胆)    小笠原氏(三階菱)    戸田氏(離れ六曜)



     1633〜1638      1638〜1725      1642〜1725
  松平氏(丸に三つ葵)    堀田氏(堀田木瓜)    水野氏(丸に澤瀉)

松本城に隣接する松本市立博物館には、これらの時代の調度や武具が、数多く展示されております。


          陣羽織(六曜)        甲冑(源氏車)
        矢袋(亀甲に花角)          陣羽織(三階菱)
      甲冑手甲(釘抜き、片喰)  左の写真を拡大したもの(ヤヤピンボケ)
           枕(六曜)        長持(丸に三つ葵、六曜)

作られた時代は様々ですが、それぞれの品に、家紋への誇りと敬意が籠められているようで、商魂をメラメラと燃やしていた私は、少々反省させられました。






今回、一泊の旅行でしたが、かなり高いお宿に宿泊しました。


ただ、高いと言ってもお値段ではなく、標高でして、まだまだたくさんの雪が残っていました。(というか翌日は吹雪でした。)


最後に、いい年した私たち親子で作った雪だるまです。

かなり、かわいい・・・と思いませんか?




12.歌舞伎座の鳳凰


東京 銀座のシンボル「歌舞伎座」が、老朽化のため2010年4月の公演を最後に、立替になるそうです。


4代目になる現在の建物は、国登録有形文化財だそうでニュースでも大きく取り上げられています。


そのニュースで、歌舞伎座の正面の大きな青い櫓が映し出されました。


http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Kabukiza_Yagura.jpg


「おっ、法隆寺の紋だ・・・。歌舞伎座と法隆寺・・・。どういうツナガリ?」


法隆寺といえば、世界最古の木造建築であり、日本で初めて、ユネスコの世界文化遺産リストに載った、正徳宗の総本山です。

右にあるのは、その寺紋である「鳳凰紋」です。

歌舞伎座のホームページによると、明治22年歌舞伎座落成当時の座主だった「福地源一郎」という方の自宅の釘かくしに使われていて、それが大変気にいっていたため、歌舞伎座の櫓紋となったのだとか。
  大和法隆寺寺紋 もともと、この文様は、法隆寺の宝物「鳳凰円文螺鈿唐櫃」に使われたいたものです。

鳳凰円文螺鈿唐櫃http://shofu.pref.ishikawa.jp/inpaku/encyclopedia-j/db/img/r254-c0000646.jpg


螺鈿の見事な箱です。


螺鈿とは、貝殻を薄く削ったものをはめ込んでいく細工ですので、モザイクのように、細かいパーツを組み合わせて描きます。


歌舞伎座の櫓紋も、螺鈿の文様と同じように、パーツの繋ぎ目がそのまま表現されています。


箱には、歌舞伎座櫓紋のように右向きのものと、左向きのものが両方描かれています。


上の「大和法隆寺寺紋」は、平安紋鑑に記載されているものを参考にしましたが、家紋の場合、鳥や動物などがモチーフの場合、ほとんど左向きに描かれています。


      鷹の丸       孔雀鳩     相馬繋ぎ馬

いろいろ調べてみましたが、はっきりした理由はわかりませんでした。(理由をご存知の方、お教え願えれば幸いです。kamon@rhythm.ocn.ne.jp


鳳凰の家紋も、紋帳にいくつか載っていますが、どれも左を向いています。


            鳳凰の丸              舞鳳凰           有職鳳凰

鳳凰は中国の空想上の鳥です。


竹の実しか食べず、青桐に棲み、国を治める天子が生まれる際、姿を見せると言われる「瑞獣」であることから、家紋として用いられたのでしょう。


法隆寺の金堂天蓋に描かれていますが、有名なのは平等院鳳凰堂の鳳凰で、現行の一万円札裏側に描かれています。


手塚治虫作の漫画「火の鳥」に描かれている「火の鳥」の姿は、この鳳凰をモデルとしているようです。


ただ、その生態?はヨーロッパのフェニックス(不死鳥、火の鳥)に近く、二つを混合した存在となっています。




ちなみに、私が「フェニックス」と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、30数年前のテレビドラマ「柔道一直線」の必殺技です・・・・・。この話、わかっていただける方、少ないだろうなぁ・・・・・。



11,大河ドラマ「天地人」の話


新年明けましておめでとうございます。


年明け早々、社会では暗い話題が多いですが、「笑うかどには福来る」と考えて、明るくポジティブに頑張っていこうと思います。




さて、記録的な視聴率を誇った「篤姫」が終了し、新大河ドラマ「天地人」の放送が始まりました。大河ドラマ「天地人」公式ホームページ http://www9.nhk.or.jp/taiga/


舞台は、「篤姫」のきらびやかな大奥から、下克上の乱世へと大チェンジです。


主人公は、「義」を貫いた戦国武将、「直江兼続」。妻夫木聡さんが演じます。


直江兼続といえば、有名なのは、大きく「愛」の文字が掲げられた兜。
ドラマのタイトルにも登場します。

私も、昔、初めてこの兜を本か何かで見たとき、何かすごいミスマッチを感じましたが、同時にこのような兜をかぶっていた武将とどんな人物だったのか、大変興味を覚えました。(といって、実際には、「直江兼続って人なんだ、へえぇ・・・」で終わってしまったのですが。)

ところで、家紋屋として気になるのは直江兼続の家紋。
  三つ盛亀甲に花角 しかしながら、これには諸説あり、少々困っています。

ドラマの中には、今のところ兼続が家紋を身に着けている場面はないようですが、NHK大河ドラマのホームページでは、上記の「三つ盛亀甲に花角」がデザインされています。


しかし、兼続の家紋として伝わっているものは、他にもあります。


      亀甲に花角           亀甲に花菱      三つ盛亀甲に三葉

実際には他にもあります。


現在、大名や家臣の家紋等を調べるのに便利な「武鑑」は、17世紀中旬にならないと、発行されていません。


そこで、現存している古文書や武具、調度品、書画などから調べていくのでしょうが、兼続の直系は早くに絶えてしまっているらしく、結論は出ていないようです。


NHKも歴史考証は、相当やっているのでしょうし、私ごときが結論など出せようはずもありませんので、このホームページ上の「様々な家紋」の「大河ドラマ天地人登場人物の家紋」では、「三つ盛亀甲花角」を記載してあります。


また、「天地人」では、有名な戦国武将が数多く登場するため、「様々な家紋」の「戦国武将の家紋」とかなりかぶってしまいましたので、「戦国武将の家紋」の一部を入れ替えました。そちらもご覧下さい。




ところで、私の義兄が「今まであまり大河ドラマ見なかったけど、今回は初回からしっかり見てる。」というので、理由を聞くと、「だって、ウチの娘の名前『愛(マナ)』じゃん。」・・・・・・・。何だかヨクワカラナイ親バカです。




参考文献  泡坂妻夫著「家紋の話〜上絵師が語る紋章の美」新潮社、丸山浩一著「家紋由来帳」日栄出版、本田總一郎監修「新集家紋大全」梧桐書院、千鹿野茂著「日本家紋総鑑」角川書店、丹羽基二著「家紋と家系事典」講談社、加藤秀幸解説「別冊歴史読本 日本の家紋6000」新人物往来社、大隈三好著「家紋辞典」金園社、澤等監修「イラスト図解 家紋」日東書院 他(順不同、敬称略)


※本ホームページ上の記載内容について、誤り等がありましたら、それは本ホームページの管理者である私の責任であります。まだまだ、知識が足りない点はご笑赦ください。